上りのエスカレーターに乗った瞬間、私はいつも哲学者になる。
たった数十秒なのに、やたらと深いことを考え始める。
「人生って、これに似てへんか?」と。
立っているだけで上に運ばれる人。
横をスタスタと歩いて追い越していく人。
私はだいたい、立ち止まりながらも周囲を気にしているタイプだ。
「歩いたほうがええんかな。」
でも、ここで無理して転んだらかっこ悪い。
安全第一という名の言い訳を、今日も胸に抱く。
途中でふと気づく。
そもそもこの階、ほんまに用事あったっけ?
目的もあいまいなまま、私は着実に上へ運ばれていく。
到着してから気づく。
「あ、ひとつ下やった。」
人生の遠回りを、たった十秒で体験する。
下りのエスカレーターに乗り直しながら、また考える。
遠回りも、まあええか。
立ってるだけでも、ちゃんとどこかには着く。
エスカレーターで人生を考える男は、今日も小さな哲学を抱えている。
ただし、だいたい目的地を間違える。
それでもなんとかなるのが、大阪のいいところ…たぶん。
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