大阪の夕方は、少しだけ映画みたいに見える。
昼間はただの道だった場所が、夕方になると急に表情を変える。
ビルの窓にオレンジ色の光が映って、車のライトが少しずつ目立ちはじめて、歩いている人の影が長く伸びる。
それだけのことなのに、なんとなく映画のワンシーンみたいに見える時がある。
大阪の街は、いつもにぎやかだ。
駅前には人がいて、商店街には声があって、信号の前には急いでいる人と、別に急いでいない人が同じように立っている。
昼間に見ると、少しごちゃごちゃしている。
でも夕方になると、そのごちゃごちゃした感じまで、どこか物語の背景みたいに見えてくる。
たこ焼き屋の明かり。
自転車で帰っていく学生。
買い物袋を持って歩く人。
ビルの間から少しだけ見える夕焼け。
そういうものが重なって、大阪の夕方になる。
特別な観光地に行かなくても、いつもの道にそういう景色がある。
派手な夜景になる前の、まだ少し生活感が残っている時間。
その時間の大阪が、個人的にはけっこう好きだ。
完全にきれいすぎる街ではない。
電線もあるし、古い看板もあるし、細い道もある。
でも、その少し雑多な感じが、大阪らしさなのかもしれない。
きれいに整えられた景色よりも、人がちゃんと住んでいる感じがする。
夕方の光は、その生活感を少しだけやさしく見せてくれる。
帰る人。
まだ働いている人。
これからどこかへ行く人。
何も言わずにすれ違うだけなのに、それぞれに一日があったのだと思う。
大阪の夕方は、そういう人たちの時間が混ざっている。
だから映画みたいに見えるのかもしれない。
大きな事件が起こるわけでもない。
感動的な音楽が流れるわけでもない。
ただ、夕焼けの中を人が歩いている。
それだけで、少しだけ物語に見える。
昼間の疲れが残ったままでも、夕方の空を見ると、少しだけ立ち止まりたくなる。
今日もなんとか終わりに近づいている。
そんな感じがする。
大阪の夕方は、きらきらしすぎていない。
でも、暗くもない。
にぎやかさと寂しさの間にあるような、ちょうどいい時間だと思う。
駅のホームから見る空も、川沿いに映る光も、商店街の奥に沈んでいく夕日も、全部が少しだけ映画みたいに見える。
たぶん明日になれば、またいつもの景色に戻る。
でも、夕方だけは少し違う。
大阪という街が、いつもより少しだけ静かに、少しだけやさしく見える。
そういう瞬間があるから、何気ない帰り道も悪くないと思える。
大阪の夕方は、特別な場所ではなくても、少しだけ映画みたいに見える。
そしてその映画の中には、今日を終えようとしている自分も、たぶん少しだけ映っている。
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